まだヘナをしたことがない人へ
ヘナも一般的なヘアカラーも取り扱っている私自身の経験から、ヘナはヘアカラーとは同じものとして語れないという考えに至っています。
ということを、ヘナをはじめてする人は知っておくべきですし、美容師としても伝える必要があると思っています。
ヘナとヘアカラーは全く性質が異なるものです
ヘナはヘアカラーのように短時間で染まりません
多くのユーザーさんがいままで一般的なヘアカラーを使用してきて、当たり前のように短時間染まることや、カラーバリエーションのの豊富さ、手軽さといった化学物質ならではの恩恵を受けてきています。早く染まって、色も豊富なのが普通、という感覚を持たれるのも無理はないと思います。
そこで、デメリットである髪のダメージや皮膚への刺激などから体に優しいカラーを探すときに、インターネットの情報などで「ヘナ」がいいらしい、ということを知る方が多いと思います。
そしてヘナ(ここでは化学染料を含まない100%植物)を試してみたけれど、色も、発色にかかる時間も、手間も、コストも、全てが普通のヘアカラーと違うことに疑問を感じる人も多いと思います。
「どうしてカラーのような染まり方にならないのだろう?」と思われる方もいらっしゃると思いますが、100%ヘナは植物以外の何物でもありません。
化学物質で作られたカラー剤は、はじめから髪を染めるために都合が良いように作られたものです。
このことを、まず心に留めておくことで、ヘナに対して期待はずれな感じや、誤解やトラブルを避けることができるとおもいます。
ヘナの魅力的なところ
ヘナ特有の染色するはたらきや、髪へのケア性を利用して白髪を染める人もいる。そんなスローな位置づけかなと私自身は感じています。
インディゴや他の植物染料を駆使してオレンジ以外の色をつくることはできますが、やはりスローなやり方ですので、ヘアカラーの利便性や表現性を重視する人には残念ながら向いているとは言えません。
ヘナは自然なものだけで髪を美しく保ちたい、スローでミニマムな美容が好きで、環境や体に優しいものを楽しみたい人に向いているとてもアナログでナチュラルな髪のお手入れ法です。
私自身も普段の生活でヘナを使ってその良さを感じています。
ヘナとアルカリカラーの比較12項目
②匂い
③頭皮への刺激
④アレルギーリスク
⑤毛髪へのダメージ
⑥退色
⑦所要時間
⑧脱色力(明るくする)
⑨カラーバリエーション
⑩トリートメント性(ツヤ、ハリ、頭皮清浄)
⑪からだへの影響
⑫テクスチャー(質感や感触)
20年間いろんなジャンルのヘアカラー製品と出会ってきた技術者目線での個人的な感想ではヘナはヘアカラーと「同じもの」ではなく、植物がもともと持っている色素で髪が染まるという恩恵を受けるものと位置づけています。
そもそも化学物質のヘアカラーとヘナを比べるのは無意味なことと思いますが、12の項目についてヘナとアルカリカラーの特徴の比較を忖度なしでまとめました。
ヘナの良さはダメージレスなところと、アルカリカラーの化学染料を数十年の長期間使う髪や皮膚への影響を避けられること、髪や頭皮へのトリートメント性やツヤがすぐれていることなどです。何より自然の恵みを体感できる心地よさ、楽しさが魅力です。
ヘナ(植物100%で化学物質を含まないのもの) | アルカリカラー | |
成分 | ヘナという植物の葉、ローソンという色素でゆっくり着色 | 化学染料やアルカリ、過酸化水素他 |
匂い | 薬草のような植物の匂い。薬草、草のような。 | 製品によって差はあるが揮発臭、刺激臭 |
頭皮への刺激性 | 健康な頭皮ではしみることは少ない | 比較的しみやすい |
アレルギーの可能性 | まれにあり(植物に対してのアレルギーなど) | あり(ジアミンなどの化学物質) |
毛髪へのダメージ | ほぼなし(あまりにダメージ毛だときしみを感じることあり) | ダメージあり |
退色 | 回数を重ねたところは濃くなる | 1〜2ヶ月で褪色、明るい色ほど退色早い |
所要時間 | 60分〜数時間 | 20〜30分(1回単色の場合) |
脱色力(明るくする) | 明るくならない(脱色力なし) | 明るくすることができる |
カラーバリエーション | オレンジ、インディゴ(藍の仲間、青系)などのミックスでブラウンに | 幅広い |
トリートメント性(ハリツヤ) | とても良い。頭皮のケアにも◎ | どんなに低アルカリでも多少ダメージする |
からだへの影響 | 香りに癒やされたりと特に害はない、人によって+αのメリット | 接触性皮膚炎など注意が必要な化学物質 |
環境への影響(排水など) | 化学物質を含まない。 | 化学物質が多数含まれる。なるべく下水に流さない。 |
持続可能か? | 高品質なものは手選別など人の手間かかかっているので流通量が限られている。繰り返しのダメージはほぼ無い。しいて言えば染まったものを脱色しにくい。 | 比較的入手しやすいが長期継続でダメージ、毛根への影響などの懸念あり |
テクスチャー | ヘナ葉を乾燥、機械または手選別、粉砕して微粒子のパウダー状に。抹茶のような見た目。水(微温水)を加えてペースト状に練って使う。 | 1剤アルカリ剤、2剤過酸化水素水をミックス。(他の化学物質も含みます) |
ヘナは時間をおいてもブラウンになりません、オレンジ色です
ヘナというのはここでは100%植物のみの、化学物質を一切配合しないものとします。
ヘナはオレンジ色のローソンという色素を持っている植物です。化学物質の強いはたらきがありませんので何回染めても、何時間おいても、白髪染めのような黒っぽい色にはなりませんし、髪を脱色し明るくするはたらきも持っていません。
ヘアカラーやパーマはそもそも化学物質のちからを利用して髪の形や色を短時間で大幅に変えることができるものです。
ヘナやインディゴやターメリックなどは、植物が持つ色素を利用して古くから生地を染めたり、ヘアケアに使われたり、髪を染めたり、からだに装飾を行ったりという使い方がされてきました。
ヘナは植物ですので美容師によって見解は違うと思いますが厳密に言うとヘアカラーとは違うものです。
色がつく、という点で通常の化学物質の白髪染めなどのヘアカラーと同等の自由な表現性を持ったものではありません。
化学物質を使わず、髪や頭皮にダメージを与えずヘアケア重視で白髪を隠したい人にヘナが向いています
ヘナは、単純に髪の毛にローソンというオレンジ色の色素が入るだけですので白髪の割合によって見え方が違ってきます。
下の写真は、左から100%白髪、真ん中が12レベルくらいにブリーチされた髪、右は白髪と黒髪30%ずつのサンプルです。
ヘナはアルカリヘアカラーと違って放置時間に自由度がある
下はヘナをした直後のサンプルです。左の3つは60分を一回染めたものです。
ベース(染める前の髪の明るさ)によってこんなふうに仕上がりの印象が違います。もとの髪が明るいほど、白髪率が高いほどオレンジ色が強く見えます。(右3つは40分)
また、ヘナは自然物ですので産地や気候、人によってなどさまざまな要因でわずかな色のちがいがあります。
はじめて染める部分に40〜60分くらい染めると下の写真のようなやや明るいイエローオレンジに発色してきます。黒髪に白髪交じりの人はハイライトのように見えます。(それぞれ3つの一番右)
白髪率50%(白と黒が半々くらい)のグレーヘアのウィッグに同じ条件で染めると下の写真のようになります。
白髪の人がはじめてヘナをするとき、40〜60分くらいだとやや薄い発色です。髪の太さや染まりやすさ、白髪の量によってもっと濃くなったり、薄くなったり個人差があります。黒い筋状に見えるのは黒い髪の部分です。
ヘナは下の髪の色が透けて染まります。
すでにヘアカラーをしているときはヘアカラーの色と重ったところは濃くなります。
ヘナは数日経つと空気酸化でオレンジ色が少し濃くなる
下の写真はヘナで染めて1ヶ月たった後の状態です。
ヘナの色素は染めた直後は黄色っぽいオレンジですが数日すると空気酸化でやや赤褐色寄りに落ち着いた色調になっていきます。
アルカリカラーにはない自然の植物が持つ特徴です。染める回数が重なるにつれて、オレンジ色が濃く深くなって行く感じです。こういう自然のチカラを感じながら髪の手入れができるのも、ヘナの楽しいところです。
放置時間によるヘナの色の濃さの違い例
下の写真は先ほどの一度だけ40分間染めたウィッグに後日何日かに分けてヘナを60分染めるのを6回繰り返したものです。
左サイドの黄色っぽいところは40分/一回染めの部分です。
比較すると、色のちがいがはっきりわかりますよね。ヘナは植物ですので野菜と同じように産地や、その年の気象条件などさまざまな要因によって発色が少しずつ違います。天然のものなのでいつも全部同じではないところも楽しいところです。基本、オレンジ一択です。
ヘナが向いている人
ヘナが向いている人は以下のような人です。(例外もあります)
・すでにヘナをしたことがある方、より品質の良い安全なヘナを使いたい方。
・自然志向、エシカル志向の方。
・化学物質のヘアカラーを続けることに不安を感じる方。
・何らかの敏感体質で化学物質などの刺激などが苦手な方。ヘアカラーがしみる方。
・ヘアカラーのアレルギーを持っている方。
・薬剤での加工のない自分の黒髪が好きで、少しだけ白髪があるができればヘアカラーをしたくない方。
・髪や頭皮にダメージを与えたくない方。
・髪を明るくすることを望まない方。
・健康的でシンプルな自然美を大切にしていて、からだと心と環境に優しい美容をしたい方々におすすめです。
ヘナとヘアカラーの最大の違いは髪や頭皮にダメージや刺激があるかないかということ
ヘナについては、美容師によって大きく意見が分かれるものですが、私が考えるヘナとヘアカラーの一番大きな違いは、髪や頭皮、毛根などにダメージや刺激がないかというところです。
時代とともにケミカルなヘアカラー類は使いやすさなど大きく改良されてきましたが、どんなに「やさしい」ヘアカラーでも最低限の薬剤ダメージがつきまといます。
年に数回ならまだしも、年齢とともに白髪の関係でカラーリングをする頻度が高くなっていきますので、単純計算で年間10回以上の方は5年で50回以上、10年で100回以上、アルカリや過酸化水素、化学染料などの化学物質に髪や頭皮がさらされることになります。
もちろんアルカリカラーの色や明るさの表現性の高さ、デザイン性の自由度は目を見張るものがあります。アレルギーがなく、頭皮もじょうぶでアルカリカラーをしても一生不具合が起こらない人がほとんどですが、敏感肌やかゆみが出る人、HSP(とても敏感な体質)などの方、刺激や匂い、感触などが負担になっている人にとっては毎月のカラーリングやカラー剤選びがストレスになっているのではないでしょうか。
画像出典:Canva
アレルギー体質などでヘアカラー選びに困っている方へ
実は私も、子供の頃からアレルギー体質を持っているのですが美容師という仕事柄、長い間たくさんの化学物質とともにサロンワークをしてきました。
仕方がないことですがアシスタント時代は毎晩手指、腕のかゆみと出血、からだの蕁麻疹、アレルギー性鼻炎の悪化との戦いでした。年齢が重なるに連れて、髪をきれいに見せる効果は高くても、気管支喘息のせいでからだが受け付けない薬剤が増えてきました。そういう体質ですのでアルカリカラーなどができない人のご苦労や不安はよくわかります。
このような悩みを持っている方は、もっと自然な美容ができる方法はないだろうかとさまざまな情報をリサーチして、知識もたくさん持っていらっしゃる方が多いと思います。情報量が多すぎたり、偏った意見もあることから、何が本当なのか解らなくなることも多いのではないでしょうか。
アレルギーが出る人は自己判断でヘアカラーを選ばないよう気をつけて
自分の体質にあったヘアカラー剤を選ぶことは専門的な知識が必要ですし、客観的に自分のことを把握することはとてもむずかしいものです。
でも、ご心配はいりません。クライアントさんのカラーに対する仕上がりの要望や体質、繰り返し頻度、ホームケアの環境など総合的に考えて、100%ヘナ一択ではなく自然派、一般的なヘアカラー剤の垣根を超えてお客様に最適なカラーリングをご提案します。
色みへのこだわりがある方、ストイックな完全自然派主義ではない方には、発色と色味のバリエーションを増やす事ができる化学染料を必要最低限配合したハーブのカラー剤など、痒みやアレルギー、匂いや刺激の苦痛が少ないカラーリングライフの選択肢をご用意しています。どの材料でも色の再現性などに一長一短があります。どんな薬剤の選択肢があるかは、以下の記事のチェックリストをぜひお試しください。